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ストレージ容量よ、さらば!月1500円で実現する快適データ生活
「また、この表示か…」
ファイルをクラウドにアップロードするたび、じりじりと増えていくデータ使用量。
そして、画面の隅に灯る、あの忌まわしい赤色のインジケーター。
追い打ちをかけるように表示される「上位プランに変更しませんか?」という、もはや脅迫にも似た甘い誘惑の言葉たち。
ストレージの残り容量を気にする日々とは、もうおさらばしたい。
そう願うのは、きっと俺だけではあるまい。
こんにちは。現役でエンジニアとして飯を食っている俺が、今日はそんな悩みを抱えるあなたに、ある秘策を授けよう。
何を隠そう、この俺は月々わずか1,500円ほどで、実質的に容量を気にすることなく使えるクラウドストレージ環境を構築しているのだ。
「そんなうまい話があるものか!」
そう思ったあなた、まあ焦らないでほしい。
この記事を最後まで読めば、そのカラクリと、あなたも実践できる具体的な方法が明らかになるはずだ。
夢か幻か?月1,500円で容量無制限のクラウドストレージ
さて、いきなり結論から申し上げる。
残念ながら、月額1,500円ぽっちで真の意味での「容量無制限」を謳うクラウドストレージサービスなど、この世には存在しない。
「なんだ、やっぱり釣りか…」と、ここでブラウザを閉じようとしたそこのあなた。
もう少しだけ、ほんのもう少しだけ、この話に付き合ってほしいのだ。
なぜなら、ここからが本題なのだから。
では、なぜ月1,500円で容量無制限のクラウドストレージなどという夢のような話が存在し得ないのか。
答えは至極単純。
データを安全に、そしていつでも取り出せるように保存し続けるには、想像を絶するほどのコストがかかるからだ。
考えてもみてほしい。
あなたの写真、動画、大切な書類…それら膨大なデジタルデータは、どこかのデータセンターに設置された無数のハードディスクに記録されている。
これらのハードディスクを24時間365日、最適な状態で管理し続けるだけでも大変な労力だ。
データセンター内の温度や湿度を一定に保つための空調設備、万が一の停電に備える自家発電装置、そして何重ものセキュリティシステム。
これらすべてに、莫大な費用と人手が必要となる。
そんな血と汗の結晶とも言えるクラウドストレージを、月々たった1,500円で、しかも容量無制限で使わせろだなんて、そんな虫の良い話が存在するだろうか。
いや、断じてない。
とはいえ、だ。
このまま「ありませんでした、残念!」で終わっては、あまりにも芸がない。
そこで、俺からの代替案を提示しようではないか。
まずは己を知ることから。あなたの「ニーズ」は何だ?
そう、クラウドストレージを選ぶ上で、何よりも先に考えるべきこと。
それは「自分自身のニーズ」を正確に把握することだ。
一体自分はどんな種類のデータを、どれくらいの量持っているのか。
そして、それらのデータをどのような形で、どれくらいの頻度で利用したいのか。
クラウドストレージの選定は、これらの問いに対する答えが出てからでも決して遅くはない。
言葉で言うのは簡単だが、具体的にどうすれば良いのか。
ここでは、この俺自身のケースを例にとって、ニーズの掘り下げ方をお伝えしよう。
きっと、あなたの参考になるはずだ。
Step1: 己が何を保存しているのか、その実態を暴け!
最初のステップは、現在自分が何をどれだけ保存しているのか、その種類とおおよそのサイズを洗い出すことだ。
いわば、デジタルデータの棚卸し作業である。
俺の場合は、こんな具合だった。
- 本業で必要な書類や資料: 約15GB
- これは日々の業務に不可欠なものだ。
- 趣味で撮影した写真の数々: 約130GB
- 旅の思い出、何気ない日常の一コマ。気づけば結構な量になっていた。
- 撮影した動画ファイル: なんと1TB以上!しかも、今後も雪だるま式に増える見込み…
- これが一番の悩みの種。高画質で記録すると、あっという間に容量を食いつぶす。
- 過去に使っていた古いパソコンやiPad、スマートフォンのバックアップデータ: 約300GB
- いつか使うかもしれない、という淡い期待とともに眠っているデータ群だ。
この洗い出し作業で、俺のストレージを圧迫している主犯が「撮影した画像や動画」であることが判明した。
これは大きな収穫と言えよう。
問題の核心が見えてきたのだから。
Step2: そのデータ、いつ使う?利用頻度を把握せよ!
次に、Step1でリストアップしたデータたちが、実際にいつ、どの程度の頻度で使われるのかを知ることが重要だ。
ただ持っているだけでは、宝の持ち腐れになりかねない。
俺の場合、それぞれのデータの利用頻度は以下の通りだった。
- 本業で必要な書類等(約15GB):
- これはもう、毎日、下手をすれば1日に何度もアクセスする。
- 仕事用のパソコンはもちろん、出先ではスマートフォンやiPadからも確認したい。
- 撮影した写真(約130GB):
- これも意外と頻繁に見返す。ふとした時に過去の写真を見たくなるものだ。
- 主にiPadで眺めることが多い。
- 時にはダウンロードして編集し、InstagramなどのSNSにアップロードすることも。
- 撮影した動画(1TB以上):
- 動画編集を行う際に素材として使う。
- 貴重な風景、今はもう見られないかもしれない建物、鉄道車両や飛行機など、個人的に価値のある映像も多いので、消すという選択肢はない。
- しかし、正直なところ、日常的に見返すことはほぼない。これがポイントだ。
- 古いデバイスのバックアップ(約300GB):
- 2~3ヶ月に一度、ふと「あのデータどうなったかな?」と思い出して漁る程度。
- 「そういえば、こんなアプリ使ってたな」とか「懐かしい写真が出てきた!」といったノスタルジーに浸るためのもの。
- 極論、なくても日常生活に支障はないが、一応残しておきたい、というレベル感。
この分析から見えてくるのは、俺が日常的に、かつ頻繁にアクセスする必要があるデータは、
「本業で必要な書類等」と「撮影した写真」の2種類に絞られる、という事実だ。
それ以外のデータは、いわば「たまにしか使わない、あるいはほとんど使わないが、消すには忍びない」ものたちなのである。
俺が選び抜いたクラウドストレージ三銃士、いざ紹介!
さて、いよいよ本題だ。
前置きが長くなってしまったが、ここからはこの俺が実際にどのクラウドストレージサービスをどのように使い分けて、月額1,500円という予算内で快適なデータライフを送っているのか、その秘密を明かそう。
驚くなかれ、俺が契約しているクラウドストレージは、なんと3つもあるのだ。
「え、3つも?面倒じゃない?」
そう思うかもしれないが、それぞれの特性を理解し、適材適所で使い分けることこそが、賢いストレージ活用の鍵なのである。
① 旅の記憶、無限の彼方へ:Amazon Photos
まず最初に紹介するのは、Amazon Photos。
その名の通り、あの巨大ECサイトAmazonが提供しているクラウドストレージサービスだ。
このサービスの何が「神」がかっているかと言えば、Amazon Prime会員であれば、なんと写真を容量無制限でアップロードできるという点に尽きる。
そう、無制限だ。信じられるだろうか。
Amazon Primeといえば、ご存知の方も多いだろう。
月額わずか600円(または年間プランならさらにお得)で、お急ぎ便やお届け日時指定便が使い放題になったり、Prime Videoで映画やドラマが見放題になったり、Amazon Music Primeで音楽が聴き放題になったりする、あの至れり尽くせりのサブスクリプションサービスだ。
その数ある特典の一つとして、否が応でも写真ストレージが容量無制限で手に入ってしまうのだから、これはもう利用しない手はないだろう。
何を隠そう、この俺は現時点で101GB、枚数にして実に2万枚もの写真をAmazon Photosにアップロードしている。
これが月額600円のPrime会員費に含まれているのだから、控えめに言っても、神。
旅先で撮影した美しい風景、家族や友人との大切な思い出、日々の何気ないスナップショット。
これらを容量を気にすることなく、しかも高画質のまま保存できる安心感は、何物にも代えがたい。
まあ、使ってやらんこともない、どころか、使わない理由が見当たらないレベルである。
② 日常使いの仕事データはここで一元管理 : Google Drive
次に紹介するのは、もはや説明不要とも言えるGoogle Driveだ。
正直なところ、このGoogle Driveの利便性は群を抜いている。
比較的安価にクラウドストレージの容量を手に入れられるだけでなく、Googleドキュメント(文書作成)、Googleスプレッドシート(表計算)、Googleスライド(プレゼンテーション作成)といった、Microsoft Officeの代替となり得る強力なオフィススイートが無料で、しかもシームレスに利用できるのだ。
(個人的な意見を言わせてもらえば、Microsoft Officeに年間2万円以上もの大金を払う気にはなれないし、正直なところ、そこまでの価値を見出せないでいる。)
俺が利用しているのは、最もベーシックな100GBのプラン。
これで月額わずか290円也。
この価格で、日常業務で発生するWordファイルやPowerPointファイル、Excelファイルが送られてきても、何ら恐れることはない。
Google Drive上でそのまま開いて編集し、必要であれば元の形式で保存し直すことも可能だ。
さすがは天下のGoogle、と言ったところか。
この使い勝手の良さとコストパフォーマンスは、一度味わうと手放せなくなる。
③ めったに使わないアーカイブデータたちの終の棲家 : AWS S3 Glacier Deep Archive
さて、いよいよこの記事の核心とも言える部分に踏み込もう。
正直に言って、これをおすすめするためにこの記事を書いたと言っても過言ではない。
それが、AWS S3 Glacier Deep Archiveだ。
「AWS S3」と聞いても、ピンとこない方もいるかもしれない。
これはAmazon Web Services(AWS)が提供するクラウドストレージサービスの一つで、主に企業システムなどで利用される、非常に信頼性の高いストレージだ。
さすがは世界最大のクラウドプロバイダーであるAmazonだけあって、その耐久性は99.999999999%(イレブンナイン)と謳われており、データが失われる心配は限りなくゼロに近い。
そんなAWS S3には、「ストレージクラス」という概念が存在する。
これは、簡単に言えばクラウドストレージの「ランク付け」のようなものだ。
例えば、
- S3 Standard: すぐにデータを取り出せるが、保存料金は比較的高め。
- S3 Glacier Flexible Retrieval: 保存料金は安いが、取り出しに数分から数時間かかる。
- S3 Glacier Deep Archive: 保存料金は極めて安いが、取り出しに通常12時間以内、場合によってはそれ以上かかる。
といった具合に、アクセス頻度や取り出し速度に応じて、料金体系が細かく設定されているのだ。
今回、俺が注目し、そして実際に活用しているのが、数あるストレージクラスの中でも最も保存料金が安く、そして取り出しが最も面倒(時間とお金がかかる)なDeep Archiveなのである。
その価格たるや、驚くべきものがある。
最も安いリージョン(データセンターの所在地)を選べば、1GBあたり月額0.00099ドル。
日本円に換算すると、1TB(テラバイト)もの大容量データを保存しても、月々の費用はわずか150円弱で済んでしまうのだ。
最高!としか言いようがない。
思い出してほしい。
俺のストレージを圧迫していた主犯の一つ、1TBを超える動画ファイルたち。
これらは「貴重だから消したくないけれど、日常的に見ることはほぼない」データだったはずだ。
まさに、このDeep Archiveに保存するのにうってつけではないか。
しかし、そんな良いこと尽くめのように思えるS3 Glacier Deep Archiveだが、一つ、いや二つ、大きな制限というか、注意点がある。
それは、データの取り出しに結構なお金と時間がかかるという点だ。
まず時間について。
Deep Archiveからデータを取り出す(専門用語で「リストア」という)には、標準で12時間以内、場合によっては最大48時間かかることもある。
つまり、「あのデータ、今すぐ見たい!」という用途には全く向いていない。
そして費用。
保存料金は激安だが、取り出し料金は別途発生する。
ざっくりとした目安だが、1TBのデータを取り出すと、だいたい4,000円程度の費用がかかると思っておいた方が良いだろう。
(取り出し速度のオプションによっても変動する。)
したがって、頻繁に出し入れする必要があるデータや、急ぎで必要になる可能性のあるデータは、先述したGoogle Driveのような、よりアクセシビリティの高いクラウドストレージに保存すべきである。
Deep Archiveは、あくまで「長期間、安全に、そして安価にアーカイブ(保管)しておきたい」データのための選択肢なのだ。
まとめ:賢い使い分けこそが、快適ストレージライフへの道
さて、長々と語ってきたが、俺が実践している月額1,500円での快適ストレージ環境の構築術、その全貌がお分かりいただけただろうか。
改めて整理すると、俺が利用しているクラウドストレージとその月額費用は以下の通りだ。
- Amazon Photos(Amazon Prime会員費として): 月額600円
- 写真データ(容量無制限)
- Google Drive(100GBプラン): 月額290円
- 日常的に使う仕事のデータ、書類など
- AWS S3 Glacier Deep Archive: 俺の場合、現在約500円程度 / 月
- めったに見ない動画ファイル、古いデバイスのバックアップなど(1TBあたり約150円で計算)
これらを合計すると、月々およそ1,390円。
見事に1,500円以内に収まっているではないか。
もちろん、今後、撮影する動画データが増えていけば、AWS S3の料金もそれに伴って少しずつ上昇していくだろう。
しかし、それでも自分で大容量のNAS(ネットワーク接続ストレージ)を導入し、その管理・運用に頭を悩ませる手間とコストを考えれば、なんだかんだ言ってこれが一番効率的で、精神衛生上も良い構成なのではないかと自負している。
この記事を通して、俺があなたに伝えたかったことは、突き詰めれば二つだ。
- 月々数千円で手に入る「真の容量無制限ストレージ」などという甘い話は、残念ながら存在しない。 しかし、諦めるのはまだ早い。
- むやみやたらに大容量プランを契約する前に、まずは自分自身の「ニーズ」を徹底的に洗い出せ。 何を、どれだけ、いつ、どのように使いたいのか。それが分かれば、おのずと最適なストレージ戦略が見えてくるはずだ。
この記事が、あなたのストレージ容量に関する悩みを少しでも軽減し、より快適なデジタルライフを送るための一助となれば、これに勝る喜びはない。
さあ、あなたも賢いストレージ活用術を身につけ、容量の呪縛から解き放たれようではないか。